百円均一の店に行くとよく思うのだが、結局何の役にも立たないものが多すぎる。
しかし、僕は芸術家として、「役に立たないところに価値がある」と常々思っている。つまり、芸術というのは役に立たないのに価値があるものであるというわけだ。
家に絵が飾ってあっても部屋の空気が綺麗になるわけではないし、暖房の効きがよくなるわけではない。彫刻が置いてあってもお湯が沸くのが早くなったり、ケータイの電波が入りやすくなったりするわけではない。
工芸品となると「用の美」など、事情はちょっと変わってくるが、それでも高価な皿や壺は滅多に使用されない。価値のあるものほど役には立たされないのだ。役に立たないものにこそ価値がある。
そういうわけで、百円ショップの役に立ちそうにないものたちにはいろいろ心を惑わされる。およそ役に立ちそうにないカードたてや、箸置き、フォトスタンドなど、つい買ってしまったりする。実際こいつらは驚くほど役に立たないのであるが。
で、この前も百円屋さんで役に立たないものを物色していたのであるが、カードたてなどのならびにひときわ目を引くものが。三角コーンの土台を斜めに切ったような高さ5cmほどの木製の物体。文鎮にしては軽すぎるし、箸置きにしては転がりすぎる。まったくもって用途不明なモノだ。ついでに言えばこれで100円は高すぎる。
しかし、この役に立たなさ加減は芸術の域に達している。というわけで、僕はこのオブジェを買った。いま机の上にそれがある。
これを見るたびに、「役に立たないものにこそ価値がある」という僕の思い込みは増強されていくだろう。
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